君の笑顔は、俺が絶対守るから。
満員電車で、仕方なく男の人とも密着しなくちゃいけない状況とはわけが違う。
一ノ瀬くんのぽかぽかした体温と、ボディーソープの清潔な匂い、それから優しい鼓動に包まれて、頭が真っ白になった。
なんで私、男の人に抱きしめられてるの!?
なんなのこの状況は……!
まともに呼吸もできず、意識を失いそうになった時。
私を抱きしめている体が、もぞもぞと身じろぎした。
「うーん……マロ?」
うなるように呟きながら、一ノ瀬くんがゆっくりとまぶたを持ち上げる。
そして寝ぼけまなこと目が合った瞬間——。
「わ……私はペットじゃなーい‼」
思わずに目の前の白い頬を、全力で平手打ちしていた。
これは私、たぶん悪くないと思う。
寝起きで混乱しているだろう一ノ瀬くんを放って、私は部屋を飛び出した。