君の笑顔は、俺が絶対守るから。
「ちょっと、一ノ瀬くん!?」
「マロー……」
むにゃむにゃ言いながら、私を抱きしめ頬ずりしてくる一ノ瀬くん。
「だーかーらー! 私はマロじゃないってばー!」
結局今朝も、パシンと乾いた快音が響き渡ったのだった。
そしてそのあとの朝食の席では、再び頬に赤いもみじをつけた一ノ瀬くんが、むすっとした顔でパンをかじっている。
「兄ちゃん。梓おねえちゃんに何したの?」
「うるせぇ」
「怪しい……。なんかいやらしいことしたんだ」
「黙って食え」
テーブルの下で、お互いの足を蹴り合う一ノ瀬兄弟。
私は聞こえていないふりでサラダをもしゃもしゃと食べる。
私、悪くないもん。
寝ぼけて抱き着いてくる一ノ瀬くんが悪いんだもん。
だいたい、私をマロと間違えるってどういうこと?
肌触りも大きさも全然ちがうじゃん。