君の笑顔は、俺が絶対守るから。



ホームに並びながら、汚れた床にため息を落とす。

昨日の痴漢、さすがに朝はいないよね。

そうは思うけれど、あの嫌な感触が消えない状態で満員電車に乗るのは憂鬱でしかない。


さっきからため息ばかりの私に気づいているだろうけど、隣りに立つ一ノ瀬くんは何も言ってこなかった。

なのに電車がホームに滑り込んでくると「佐倉」と声をかけられ驚く。

どうしたの、と返す前に、電車のドアが開くと同時に手を握られた。


「え……」

「俺から離れんなよ」


そう言うと、人の流れに押されるまま電車の中へと入っていく。

私の手をしっかりと握ったまま。


どうして?

いつもは電車に乗ると、自然と離れていたのに。

そうしないと、一緒に登校していると、バレてしまうかもしれないから。


それなのに今日の一ノ瀬くんは、電車が発進しても、私を腕の中に囲うようにしてすぐ傍に立っている。
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