君の笑顔は、俺が絶対守るから。
まるで、いつも私が小鳥にしていたみたいに、周りから私を守るようにして立っている。
お姫様を守るナイトのごとく、厳しい顔で周りを警戒しながら。
あえて車両の端っこに追いやられるようにして、彼は壁になってくれていた。
「一ノ瀬くん……」
いつもみたいに息苦しくない。
一ノ瀬くんが作ってくれた小さな空間に、私は痴漢からも他の乗客からも守られている。
前は小鳥を守るために、毎朝ピリピリと神経をとがらせていた。
とにかく小鳥を守らなきゃって必死だったから。
満員電車にこんなに安心して乗るのははじめてだ。
「一ノ瀬くん。ありがとう」
絶対に聞こえているはずなのに、一ノ瀬くんは返事をしなかった。
でも見上げた顔がほんのりと赤く染まっていたから、たぶん照れてるんだと思う。