君の笑顔は、俺が絶対守るから。
普段クールな一ノ瀬くんが、真剣な顔で走っている。
私が誰かに追いかけられた時も、あんな顔をして汗だくになりながら駆け付けてくれたんだ。
「一ノ瀬くん、がんばれー!」
気づけばそう、誰より大きな声で叫んでいた。
無意識だった。
絶対応援なんてしないって決めていたのに、叫ばずにはいられなかった。
私の声が届いたかはわからないけれど、一ノ瀬くんはゴール手前でバスケ部の男子より一歩前に出た。
そのままゴールを駆け抜け、今日いちばんの歓声があがる。
やった、一ノ瀬くん一位!
夢中で拍手していると、一位の旗を持った一ノ瀬くんがこっちを見た。
目が合ったと思ったら、彼は小さく笑った。
自然とこぼれたような珍しい微笑みに心臓が跳ねた時、周りの女子が「いまこっち見て笑った~」と楽しそうに話すのが聞こえてハッとした。
別に私に微笑んでくれたわけじゃないのに、なにドキッとしてるんだろう。
表情を引き締めぷいっとそっっぽを向く。
私はまだ怒ってるんだから。
ちらりと横目で一ノ瀬くんを確認すると、ムッとした顔で背を向けるのが見えた。
その背を見て寂しさがわいたけど、たぶんそんなもの気のせいだ。