君の笑顔は、俺が絶対守るから。
【side:CHIAKI】



「一ノ瀬くん、がんばれー!!」


あいつの声が聞こえた気がした。


ゴールテープを切り、詰めていた息を戻すと、急に飛びこんできた酸素に肺が悲鳴をあげる。

先に走っていた高橋が、満面の笑みで右手を軽く上げていたので、意図を汲み取りハイタッチした。


「さすが一ノ瀬。帰宅部のくせにやるなあ」

「帰宅部だから体力はないけどな。来年は絶対走んねー」


ぼやきながら、応援席に目をやる。

佐倉のクラスの列を見れば、あいつと目が合った気がした。


かと思えば、プイと顔を背けられた。


「何だあいつ……」


わざとか。わざとなのか。


少し前から、佐倉は妙に機嫌が悪い。

たぶん、誰かに追いかけられたあの日からだ。


俺のことを待たずに帰ったうえに、追いかけられていた佐倉を必死で助けに行った俺に「ばか」と暴言を繰り返したあの日から。
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