君の笑顔は、俺が絶対守るから。



朝、私は一ノ瀬くんの部屋にいた。

深い眠りについている彼の、可愛すぎる寝顔を黙って眺める。

一ノ瀬くんへの想いに気づいたせいか、寝顔がいつも以上に輝いて見えた。


「一ノ瀬くん……」


おでこにかかる前髪を、指の背でそっとはらう。


ねぇ、一ノ瀬くん。

どうして昨日、私の手を握ったの。

どうして私なんかにそんなに優しいの。

どうして彼女がいるのに、優しくするの。


どうして……森さんと付き合ってるの。


一ノ瀬くん。私じゃダメですか。



「……なんて、バカみたい」


ダメに決まってるじゃん、そんなの。

一ノ瀬くんの寝顔を見ていると、だんだん胸が苦しくなってきた。

見つめているだけでつらい。

でも目に映さずにはいられない。


恋ってこんなにも厄介なものだったんだ。

全然知らなかった。


知らずにいた方が、幸せだっただろうか。




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