君の笑顔は、俺が絶対守るから。
「今日、寄り道ナシな。真っすぐ帰るぞ」
なんとなく、一ノ瀬くんが本当に言いたかったことは、これじゃないんだろうなと思った。
でもそれには気づかないふりをして、小さくうなずく。
「うん。わかってる」
小鳥たちと特に約束もしていないから、そのつもりだった。
天気も悪いし、おとなしくしていよう。
「お前さ」
一ノ瀬くんが何かを言いかけて、けれど言葉は続かず、開いた口が閉じられていく。
つい目の前の薄い唇をじっと見つめてしまい、慌てて視線を落とした。
あの唇で森さんとキスをしたんだ、なんて考えそうになった。
朝から何を想像しようとしてるんだ、私。
頭に一ノ瀬くんのため息が降ってきたけれど、顔を上げられない。
そのままお互い、駅に着くまで無言で電車に揺られていた。