君の笑顔は、俺が絶対守るから。
恋なんて、全然いいものじゃないや。
つらくて苦しいばっかりだ。
一ノ瀬くんの腕にからみつく森姉妹の姿を想像してしまい、ますます胸が苦しくなる。
逃げるように廊下を進み、誰の声も聞こえなくなったところで足を止めた。
「もうやだ……」
つい弱音が口からこぼれ落ちた。
ため息をついた時、後ろで足音がしてハッと顔を上げ振り返る。
そこに立っていたのは、一ノ瀬くんには絶対見せることはないだろう、冷たい表情をした森さんだった。
髪の結びで、妹の方だとわかる。
「あんたさあ。千秋のなんなの?」
刺々しい声がかけられ、肩が跳ねた。
「な、なにって、ただの同級生ですけど……」
「私が前に言ったこと、覚えてないわけ? 目ざわりだから千秋に近づくなって言ったはずだけど」
「それは、高橋くんが知り合いだから、たまたま一ノ瀬くんと話す機会があるだけで」