君の笑顔は、俺が絶対守るから。
迷う私に、それまでだんまりを決め込んでいたお父さんが声をかけてきた。
新聞を閉じ、丁寧に畳んでテーブルに置くお父さんに、私も居住まいを正す。
生活能力ゼロのダメダメなお父さんだけど、こういう時は威厳のある姿を一時取り戻すのだ。
それによく喋るお母さんの言葉よりも、無口なお父さんの一言は、ものすごく重みがある。
少し緊張しながらお父さんの言葉を待った。
「人の家で暮らすのがどうしても嫌なら、断ってもいい」
「お父さん……」
「梓が決めなさい」
こうやって何か大事な選択をしなくちゃいけない時、お父さんは私の意思を尊重してくれる。
小学生の頃、小鳥を守って男子とバトルになり呼び出された時も、中学の頃受験勉強がうまくいかずにいた時もそう。
私のことを信じて、どうするのか答えを出すのを待ってくれた。
急かすことなく、私の気持ちをいちばんに考え、大事にしてくれていた。