君の笑顔は、俺が絶対守るから。

恐るおそる振り返れば、思った通り一ノ瀬くんがすぐ傍にいて、私の財布と腕をつかんでいた。


一ノ瀬くんは私に「気をつけろ」と言ったわけじゃなく、私にぶつかってきたらしい男子に言ったらしい。

一ノ瀬くんに睨まれたその男子は「悪かったよ」と少し不満そうに言って、逃げるように去っていった。


全然『悪かった』と思っていない態度だった。

これだから男子って、と言いそうになったけど、助けてくれた一ノ瀬くんの手前言葉をぐっと飲みこんだ。


「あの。ありがとう、一ノ瀬くん」


まさか一ノ瀬くんに助けられるとは。

昨日は小銭を拾ってくれたし、やっぱり高橋くんの言う通り、優しい人だったりするのかな。


一ノ瀬くんはじっと私を見下ろし、財布を返してくれた。


「別に。ボケッとしてるから何度もぶつかられるんじゃね? 周り見て歩けよな」
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