【短】JELLYFISH
正面に見える大きな水槽に足を進めるとイルカたちが自由に水の中を駆け回っていた。
親子らしい2頭のイルカが寄り添いながら遊んでいる。
小さいイルカが大きい方に必死について回る様は見ていて微笑ましかった。
でもそんなイルカたちと裏腹に私の心は空虚で言葉には出さずバイバイ、と言いその場を離れた。
進めば進むほどいろんな魚に出会った。
美しく設計されたサンゴ礁に色とりどりの熱帯魚。
狭い水槽に押し込められたイワシの群れたち。
怖いくらいに暗い水槽に潜む深海魚。
ひたすらに笑顔を向けるエイに悠々と泳ぐサメたち。
でもそのどれも私の心は沈むばかりで今こんなところにいる自分に虚しくなった。
どこに行ってもいるカップルを見たくなくて1人になりたくて無意識に早足になる。
「なんで水族館なんて来たかなぁ?」
つい呟いた。
ただの気まぐれだったけどこれじゃ自分で傷口に塩を塗ってるようなもんだ。
多分期待してたんだ。
隣に彼がいて笑いあってることを。