僕の宝もの
 
小学校四年生の頃、湊は同じクラスの男子にリボンのついたスカートを馬鹿にされ汚されカッターで切られた。似合わないとか気持ち悪いとか、たくさんの言葉で湊は傷つけられた。その男子は、きっと湊のことを好きだった。多分、湊も。


男子は、先に成長期に入ってしまった湊が、そこらの男子よりも端正に成長していく過程を後ろの席から眺めていて、置いてきぼりの恐怖を必要以上に感じてしまったのかもしれない。


それからの湊は、男子と変わらない格好しかしなくなってしまった。フリルやリボンやレースだけじゃない、自分を彩る全てを捨てた。


確かに湊は、順調に端正にカッコよく成長していき、バッサリ切ってしまった短い髪や、すらりと伸びた手足で纏うすっきりしたパンツスタイルがとても似合う子になったけど。……悔しいが僕も一度も身長で勝てたことはないけど。


確かに、湊の愛するロリータの中には湊には似合わないものもあるけど、そんなのは他の物事にだって共通して言えることだろう、合うものと合わないものなんて。そもそもあいつ以外誰も湊をけなしてない。


だから、一切を捨ててしまうなんてことはしなくてもいいんだ。



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