ハニーレモンの太陽。
その日のホームルームで、まさか朝の彼と再会することになるとは、思ってもみなかった。


隣の席の友人、八重樫日奈とその幼馴染み、日奈の前の席の柘植(つげ)流星くんと三人で


先生が来るまでの間喋っていた。



「今日先生遅くない?ねー美桜」

「そうだね、どうしたんだろう」

「桧山学級委員なのに何も聞いてねーの?」

「バカ流星。学級委員だからって何でもかんでもしってるわけじゃないの!」



私が学級委員だから知ってると思った柘植くんに、日奈のツッコミが飛ぶ。


日奈と柘植くんのこの会話は、いつものこと。
ちょっと抜けてる柘植くんを、日奈はいつも楽しそうにツッコんでいる。


幼馴染みならではの距離感が、私は少し羨ましかった。



「おまたせー、おはよう」



担任の和田恭介先生が教室に入ってくるなり、
生徒から一斉に「遅い!」「先生遅刻ー」などのブーイングが飛び交う。



「わりわり、転校生の迎えとかで色々あってなー」

「転校生?」

「それこそ桧山きいてねーの?」

「ううん、聞いてない」



先生はざわめきを抑えるように出席を取り始めた。
そういえば…と私の横の席、窓側の一番後ろが不自然にひとつだけ空いていた。



「よし。全員出席と。じゃあお待ちかねの転校生呼んでくるな、教室から出るなよー」




先生が出ていくなり、クラスは一気に騒がしくなった。
柘植くんも可愛い女子がいいななんて騒ぐから、日奈が柘植くんの頭を叩く。



(転校生か…)



ふと、朝の彼を思い出した。
そんなわけない。そんな偶然、少女漫画じゃあるまいし。




「おーい、静かにー」



先生の後ろについて入ってきたのは



「え…っ」



鮮やかな栗色の髪を揺らし、美しい姿勢と太陽のようなオーラを纏った



「初めまして、蒼井悠陽です」



電車の彼、蒼井悠陽くんだった。
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