赤黒マフィアの色恋模様
気づかなかった。
それが少しショックだった。
気を立たせるようにと紫亜様も言っていたのに……。

むぅ、っと心の中で頬を膨らませていると、

「菜結、だね?」
なんで、この人、あたしの名前を知っているのだろう?
あ、夢だからか。なんか、納得。

「ああ、喋れないのか」
頷く。実際には、頷きたかった、か。

「頑張れば喋れるのだけれど……」
「そうなの!?」
目の前の男性は嫌そうな顔をしていることで、喋れたことに気づいた。

「で、確認するけれど、菜結、だね?」
「そーだよ?貴方は誰です?」
「そうだなぁ、〈吸血鬼〉とだけ、言っておくよ」
「〈吸血鬼〉……?強い?」
「まあ、君の恩人よりも、ね」
「紫亜様よりも強いの?」
「ああ」
ニッコリと笑うと背筋に何か通ったような感覚があった。
「〈吸血鬼〉?あれ?聞いたことある気がする……」
「そうか。何を話したのかな」

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