幼なじみの甘い甘い焦らし方
第1話
「となりのクラスの早川さん、王子様にフラれたらしいよ」
「えっ、嘘ー!?」
校庭の木々が紅く染まりはじめた10月。
お昼ご飯を食べ終わった私の耳に入ってきたのは、クラスメートたちの何気ない会話。
...早川さんって、黒髪ロングの清楚な女の子だ。
肌が白くて可愛らしい、男子にも人気のある子。
そんな子が告白しても、アイツは振っちゃうんだ。
「...さすがだよ、榛名」
クラスメートの話を盗み聞きしながら、私はぽつりと呟く。
この学校には女子たちから王子様なんて呼ばれて絶対的な人気を誇る一人の男の子がいる。
名前は、水谷川 榛名(ミヤカワ ハルナ)。
背が高くて顔が小さくて鼻は高くて目は大きい。
そこらへんの芸能人にも優ってるんじゃないかってくらい完璧なイケメン。
榛名は小さい頃から天使みたいに可愛くて、ずっとみんなの人気者だった。
家が近くていつも一緒にいた私は、昔の榛名のことをよく知ってる。
いわゆる、幼馴染ってやつだ。
いつの間にか遊ぶことも話すことも少なくなって疎遠になってしまったけど、高校生になっても榛名の噂は毎日のように耳にする。
榛名の話を聞くたびに、私の胸はいつも締め付けられてばかり。
いつか、榛名が誰かと付き合ってるなんて噂を聞く日が来るのかな...。
そう思うと、今にも涙が出てきそうだった。
(...っ、て何勝手に妄想して泣きそうになってんの!?)
バカじゃないの!?と我にかえった私は荒々しく潤んだ目を擦った。
もうすぐ昼休みも終わる。
次の授業の準備しなきゃ!と席を立った時、
『生徒の呼び出しをします。1年3組 百瀬 憂、学年主任のところへ来なさい』
世にも恐ろしい学年主任からの呼び出しがかかった。
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