幼なじみの甘い甘い焦らし方
そそくさと身を小さくしながら先生の前へと移動した私。
「ご、御機嫌よう氷室先生。わ、わたくしめに何か御用でございまふっ...するか?」
先生からの冷たい視線を浴びた私は、緊張と恐怖からカチコチ。
訳の分からない日本語で舌を噛んだ。
...馬鹿だ。
そんな私の一人アホっ子劇場を無視して、氷室先生は机の上に何枚かの紙を置いた。
何とも見覚えのあるソレに、私の表情は一気に凍る。
「せ、センセ...?それは...」
「先日行った中間試験の答案用紙だ。百瀬憂、これが誰のか分かるな」
有無を言わせない氷室先生の威圧に、最早乾いた笑いすら出てこない。
ここで私は氷室先生に呼び出された理由をようやく理解した。
目の前に突きつけられたのは、真っ赤なバツが何個もつけられた見るも無残な紙。
デカデカと書かれた数字の酷いこと酷いこと...。
「赤点、だ」
「ひぇっ...」
驚きのあまり喉から変な声が出た。
「5教科中3教科で赤点を取ったのは、お前だけだ。百瀬憂」
「ヒッ...」
まさかの赤点三連勤!
一周回ってすごいな自分!...なんて馬鹿なことを言ってる場合じゃない。
「す、すみません。い、一応勉強はしたんです」
ただちょっと集中できなかっただけで。
途中で部屋の掃除とか漫画とか読んじゃっただけで。
恐ろしくて口には出せない言い訳を心の中でいくつも並べる。
「百瀬憂。お前の一学期の成績を言ってみろ」
「へ...?え、えーと...。数学が1で理科と英語が2で...」
先生に従って自分の恥を堂々と口に出す。
自分で言ってて情けなくなってきた....。