幼なじみの甘い甘い焦らし方
「いいか、百瀬」
最早うな垂れるしかない私に、氷室先生が声をかける。
「次の期末試験で赤点を取ってみろ。留年の可能性すら出てくるぞ」
「ヒェッ...」
流石は職員室の氷鬼。
落ち込んだ私に優しい言葉をかけるどころか、追い討ちをかけてきやがった...!
"留年"という恐ろしい単語に耳を塞ぎたくなる。
「まずは中間試験の補習で80点以上を出せ」
「...へ?」
「期末試験では全科目80点以上だ」
「.....は??」
「また赤点を出した日にはどうかるか...分かるな、百瀬憂」
「ヒェッ...は、はい」
半分涙目になりながら、無力な私はこくこくと何度も首を縦に振るしかなかった。
補習はまだしも期末で全科目80点以上なんて絶対無理!
なんて思いながらもそんなこと言える度胸もなく。
私は逃げるように職員室を後にした。
***
昼休みの終わりを告げる鐘とともに、慌てて教室へ戻ってきた私。
留年というワードの重みに未だショックを受けたまま、ちょこんと椅子に座る。
すると、後ろからとんとんと肩を叩かれた。
次いで、聞きなれた可愛らしい声が聞こえる。
「憂、大丈夫ー?」
「未央!!」
ばっと振り返った先にいたのは、尾上 未央(おのえ みお)。
中学生の頃から仲のいい親友だ。
私が学年主任に呼び出されたことを、気にしていてくれたらしい。
うるうると瞳を潤ませて未央の手を握る私を見て驚いた顔をする。
「ど、どうしたの」
眉を下げて心配してくれる未央に今さっきあった恐ろしい話をしてあげた。
「実はね...」