幼なじみの甘い甘い焦らし方

...アイツ?

余程いいことを思いついたのか、「ふふん」とドヤ顔を決めてみせる未央を見上げる。

あいつって誰?

「とぼけた顔しちゃってー。王子様よ。お、う、じ、さ、ま!」

「お、王子様って...」

「水谷川のことよ。水谷川榛名!」
「うぇっ!?は、榛名!?」

未央の口から飛び出して来た予想外の名前に、つい変な声が出た。
だ、誰かと思えばよりにもよって榛名!?

「む、無理無理無理!榛名は無理だよ!!」

ぶんぶんと手と首を振って全力で拒否する。

「何でよ。あんたたち幼なじみじゃん」
「そ、そうだけど...。今は仲良くないし」

昔なら簡単に頼めただろうけど、今の私には誰よりも難易度が高い相手だ。

「でも幼なじみじゃん。頼んだらきっと教えてくれるよ」
「それが無理なんだってば〜!最後に話したのなんか中1の時だよ!?」

もう3年近くまともに話してないんだよ!?
どんな顔して頼めばいいのか分かんないよ...っ!

ていうか、留年しそうなんて榛名には絶対バレたくない!
恥ずかしすぎて死ねる!

「でも水谷川って頭いいんでしょ?入学式の時代表学生だったよね」
「うぅ、まぁね。榛名は昔から勉強できるもん」

小学生のときはよく教えてもらってた。
夏休みなんか最終日によく榛名に泣きついてたなぁ。

「めっちゃ適任じゃん」

そ、そうなんだけど。
未央の言う通りなんだけど...!

「勉強教えてって可愛く言ったらいけるって」
「無理無理!何こいつって引かれて終わりだよ!」

「んな馬鹿な。あいつ絶対憂のこと...」
「むーりー!とにかく榛名には頼めない!」

< 6 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop