幼なじみの甘い甘い焦らし方
放課後。
掃除当番を終えた私は、1人家路につく。
電車通学の未央と徒歩通学の私は校門の前でいつもバイバイしちゃうから、帰り道は少し寂しい。
1人とぼとぼ歩きながら、考えるのは"留年"のこと。
たしかに1学期の成績も酷いし、中間試験の結果も散々だった。
だけど、留年ってそんな簡単にしちゃうもの?
私の危機感を煽るために氷室先生が嘘をついてるなんてこともあり得るのかな。
「...って、それはないか」
あの職員室の氷鬼が、そんな回りくどいやり方をしてくるとは思えない。
今日から頑張って1人で勉強するしかないのかなぁ。
なんて考えながら、家の近くの公園を横切った時。
「お願い!何でもするから!他に誰と付き合ってても気にしないし、ワガママも言わない!」
公園の中から女の人の甲高い声が聞こえてきた。
な、なんてすごい台詞を言ってるんだ。
ドラマや漫画でしか聞かなさそうな言葉の数々に私はつい興味を惹かれてしまった。
「しゅ、修羅場なのかな..?」
盗み見なんてダメだ、と頭の中で分かっていても好奇心は止められない。
コソコソと身を潜めながら、私はゆっくりと公園の中へ入った。