月夜の砂漠に一つ星煌めく
「前の妃?マリエフ?」
震える声で、俺は繰り返した。
実の母がいる事、母の身分、もちろん母の名前を聞くのも、生まれて初めてだったんだ。
「マリエフ前妃様は、それはそれは、お美しい方でいらっしゃいました。」
女中は、俺の背中をずっと、撫でてくれていた。
「ですが、アラビア随一の美姫を、他の国の王が、見過ごす訳がございませんでした。マリエフ様は、現国王の遠征中に連れ去られ、囚われの身になったのです。」
「えっ?母上が?」
頷いた女中の目にも、涙が溢れていた。
「もちろん、現国王は救出に向かい、マリエフ様はこの宮殿に戻って来られました。ですが、その時にはお腹の中に、お子がおられたのです。」
「……どういう、意味だ?」
「……敵にお子を、孕ませられたと言えば、お分かりになりますか?」
震えながら、涙を流しながら、女中は次の言葉を、俺に告げた。
「それが、ジャラール王子。あなた様です。」
震える声で、俺は繰り返した。
実の母がいる事、母の身分、もちろん母の名前を聞くのも、生まれて初めてだったんだ。
「マリエフ前妃様は、それはそれは、お美しい方でいらっしゃいました。」
女中は、俺の背中をずっと、撫でてくれていた。
「ですが、アラビア随一の美姫を、他の国の王が、見過ごす訳がございませんでした。マリエフ様は、現国王の遠征中に連れ去られ、囚われの身になったのです。」
「えっ?母上が?」
頷いた女中の目にも、涙が溢れていた。
「もちろん、現国王は救出に向かい、マリエフ様はこの宮殿に戻って来られました。ですが、その時にはお腹の中に、お子がおられたのです。」
「……どういう、意味だ?」
「……敵にお子を、孕ませられたと言えば、お分かりになりますか?」
震えながら、涙を流しながら、女中は次の言葉を、俺に告げた。
「それが、ジャラール王子。あなた様です。」