月夜の砂漠に一つ星煌めく
「離れなさい!ネシャート!私は、ジャラール王子に、聞いているのです!」

まるで幼い頃に、ネシャートが溺れた時に、そっくりだった。

あの時も王妃は、私を酷く叱りつけた。


「このような時間に、一緒の部屋にいるなど!汚らしい!」

その王妃の言葉に、ネシャートは涙を流しながら、訴えた。

「今仰った事を、撤回して下さい!母上!」

「何を言うのです!ネシャート!」

「ジャラール王子と、私は愛し合っています。二人の仲を裂く事など、母上とてできません!」

「何ですって!」

王妃はフラッとよろめくと、ラナーに支えられて、近くの椅子に座った。


「王子も、同じお考えですか。」

俺はその時、何も言えなかった。

「ジャラール王子……」

不安そうなネシャートの顔が、私の胸を刺した。

「言える訳がないですものね。」

急に低い声で、王妃は矢を射るような目で、俺を睨んだ。
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