月夜の砂漠に一つ星煌めく
もう、二人が言い争っている姿を、見ていたくなかった。

何よりも大事なネシャートが、実の母上と、言い争っている姿など。


「……二人とも、もう止して下さい。」

「ジャラール王子……」

俺は、王妃の前に立った。

「私達は、王妃がお考えになっているような、関係ではありません。」

「王子?」

ネシャートが、私の腕を掴む。

「ただ、話をしていただけです。他愛もない、世間話を……そのうち、日中の訓練の疲れが出てしまい、横になっていただけです。決して、ネシャートとは、何もありませんでした。」

ネシャートは、静かに手を離した。

「そうですか……それなら、いいのです。」

やっと王妃の顔にも、安堵の表情が戻ってきた。


「王妃の言う事も、分かります。例え兄妹のように育った仲でも、こんな夜更けに二人で会えば、ネシャート王女にも、有らぬ噂が立つでしょう。」

「ジャラール王子。分かって頂けるのですね。」
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