月夜の砂漠に一つ星煌めく
長い廊下が終わると、そこにハーキムが迎えに来ていた。

「ジャラール王子?」

おそらく、頬が濡れている事に、ハーキムは気づいたのだろう。

「何か、あったのですか?」

この前の、花畑の一件から、ハーキムは俺が泣いていると、やけに心配するらしい。

だから、はっきり言ってやった。


「ネシャートと、別れた。」

「えっ!?」

驚くハーキムの前を、黙って通りすぎた。

「どうしてですか!?あんなに、仲がよろしかったのに。」

そんな事を言われると、胸が痛くなる。

涙がまた勝手に、次から次へと流れた。

立ち止まって、それを手で拭うと、慌てたハーキムが、自分がいつも持っている布を取り出して、俺の顔を拭き始めた。

「あっ!すみません。きちんと、洗ってあります。」

「……知ってる。」

そう返事をすると、ハーキムはまた悲しい顔をしながら、俺の顔を拭いた。


「王妃に、ネシャートと会っている事が、知られた。」
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