月夜の砂漠に一つ星煌めく
「知られたとて、血が繋がっていらっしゃらないのですから、反対される言われは……」

「実の子として育てた、恩を忘れたのかと言われた!」

ハーキムは口を開けて、何も言えずにいた。

「王の子供ではない俺が、王の子であるネシャートに、辱しめを与えると!」

「なんて事を!例え王妃と言えど、許される言葉ではありません!」

するとハーキムは、東の棟に行こうとした。


「待て、ハーキム!どこに行くのだ!」

「王妃に、謝って頂くのです!」

「そんな事をして!おまえ自身が、許されると思っているのか!」

「私自身がどうなったとしても!あなたの名誉は、取り戻せます!」

そう言い放ったハーキムの腕を、俺は必死に掴んだ。


「ジャラール様?……」

「いいんだ、ハーキム。」

ハーキムの腕を掴みながら、俺はそのままハーキムの肩で、歯を食いしばって、泣くのを堪えた。


どのくらい時間が経っただろう。
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