月夜の砂漠に一つ星煌めく
いつの間にかハーキムが、嗚咽を漏らしながら、俺の側で泣いていた。

「ハーキム?」

「す、すみません……こん…なに……泣く、なんてっ!」

俺よりも年上のハーキムが、泣く姿を見たのは、初めてだった。

どんなに辛い訓練で、涙を溜めたとしても、決して声をあげて泣いた事は、一度もなかったのに。

「お……許し……下さい……うっ……ひっ!」

ボロボロ、ボロボロ、涙を流すハーキムを見て、許すも許さないもないだろうと思った。

「どうして……ハーキムまで、泣く?」

「あなた様の、心の内を思うと……ひっ!胸が……い、痛くて……っ!」

それを聞くと、俺もまた悲しいのか嬉しいのか、分からなくなって、終いにはハーキムと一緒に、声をあげて泣いていた。


「ハーキム!もう泣くな!」

「ジャラール様こそ、もう泣かないで下さい!」

「俺はもう、泣いてない!」

「私こそ、もう泣いてなどおりません!!」
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