月夜の砂漠に一つ星煌めく
そしていつしか二人で泣き疲れると、廊下の隅に、並んで座った。

そこは、父上から『お前を産んだ、母の部屋だ。』と、教えられた場所だった。

本当は、部屋の中に入りたかったが、夜中だった為、入れなかったんだ。


「なあ、ハーキム。」

「はい、ジャラール様。」

「母上は、今の俺を見て、どう思うかな……」

ハーキムは、鼻を一度、すすった。

「……ご立派に、お育ちになったと……嬉しく思っているはずです。」

ありきたりな答えなのに、それが嬉しかった。


「なあ、ハーキム。」

「はい、ジャラール様。」

「俺は……どうして、この世に生まれたのだろう。」

しばらく経っても、ハーキムからの返事はない。

「なぜ……母上は私の命を助けてほしいと、父上に乞うたのだろう。」

「それは!」

ハーキムは、私の手を取ると、その上に自分の手を置いた。

「人の親であれば、我が子の命を助けたいと思うのは、当たり前の事です。」
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