月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ジャラール様!」

先に立ち上がったハーキムが、俺に手を差し伸べた。

「手を貸すな!ハーキム。」

「先生?」

今までハーキムが、俺を起こしても何も言わなかった先生が、今日は何故か、一段と厳しい。

「ジャラール王子。もう少しで成人の儀を迎えられると言うのに、お一人で立ち上がる事も、できぬのですか?幼子とて転べば、自分一人で、立ち上がります。」

「先生、それは!」

「いいんだ、ハーキム。」

俺はフラフラ片足を上げ、剣を杖代わりにして、立ち上がった。


「では、構え!」

「先生!少し休む時間を、頂けませんか?」

見かねたハーキムが、先生に申し入れてくれた。

「甘やかすな、ハーキム。」

「しかし!」

なんだかさっきから、同じような事を言ってるなと思いながら、深く息を吐いた。

「いいんだ、ハーキム。」

俺もまた、同じ台詞を言って、まだガクガク言っている足で、剣を構えた。
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