好きだけじゃどうにもならない私と彼の恋事情
それから数日。
「いらっしゃいませ」が行き交う店内。
「今日もありがとう」と言ってもらえる達成感。
「お疲れ様」とシトラスの香りをはなつ店長。
はい、なーにも変わらない毎日を過ごしております。
ですが、今日はキス事件後、初の店長と二人だけの店閉め当番。
ここでアクション起こさないでどうするのって日だった。
「ありがとうございました~」
最後のお客さんも見送り、他のスタッフも帰り始める。
「さっ、早く片して帰るぞー」
店長はそれ以降は何も発することなくレジ閉めをしていた。
何か話さないとって思えば思うほど話す言葉が見つからない。
店長を見ても目が合うことはなかった。
「さあ、帰るぞー、腹へった~、今日はカレーが食べたいなぁ」
店長が伸びをしながらそう言った。
「リクエストすれば良いじゃないですか、あの人に」
やっと発した言葉がこれなんて。
自分でも口をついて出てしまった言葉にはっとする。
店長は横目で私を見た。
「お前なぁ、仮にも俺の彼女だからな!あの人はないだろう」
これが、付き合いたいって気軽に言えないもう一つの理由。
呆れながら言った店長の言葉にはちょっと反論する。
「だって、あの人を店長の彼女だなんて思いたくないですもん」
自分の方が店長の事が好きだ。
なんな、浮気女なんかより。