好都合な仮死
深夜のコンビニにくるやつは、たいていどこかしらに闇をひっ捕まえてくる。
「…しゃいやせー」
たとえば、そう。いま、店員である俺の目の前にルーズリーフと赤いペンを一本、置いた女の客とか。
商品のバーコードを読み取りながら、レジ越しに突っ立ている女を、ちらりと盗み見る。
茶色に染められた毛先は緩いウェーブが満遍なくかかっていて、細心の注意が払われているのに対して、髪の根元から黒が2センチほど見える。おしゃれなのか、ずぼらなのか。
深夜だというのに、まるでいまさっき施してきたように化粧崩れのひとつもない。
目の下にできたクマを隠すように厚く塗られたコンシーラー。明るい桃色のチークに、あまりにも控えめに引かれたリップグロス。
「684円になります」
ああ、やだな。
こういった人の矛盾を、人が気持ち悪いなと思うのは、あながち間違いではない。