好都合な仮死
「……」
俺はレジから一度取り出していた316円を再びそこに戻した。
それから、俺を亡霊か何かと思っている女に対して言う。
「俺から買った紙とペンで遺書でも書くつもりなんすか」
女の目がぱっと見開かれた。それからはじめて、その双眸が俺を見る。
遺書。
その言葉に狼狽えたように、女はすぐさま視線を落とした。
「飛び降りはおすすめしません。人生最後になるその化粧も台無しになるし、っていうか意味ないし。プリン頭は飛び出た脳みそのおかげで隠せるかもしれないっすけど」
はあー、とため息をつきながら腰を左右にひねる。立ち仕事は動かない方がしんどい。
ぼきぼき、と骨が鳴るたびに、俺はこんな骨のおかげで動けているんだなと笑えてくる。