好都合な仮死







こんなに陽気に共同自殺を持ちかけられたそりゃあ馬鹿にされてると思われても仕方ない。この反応には毎度のこと。慣れっこだ。








「俺も死にたい者でして。ただまあ、やっぱり死ぬなら誰かと一緒の方が楽しいかなっていうことで、探してるんすよ。死に友ってやつ」

「ばかじゃないの」

「じゃああんたもばかってことだ」

「一緒にしないでよ」

「なんで?死にたい者同士、仲良くしようよ」







女の本性が現れる。





下唇をぎゅっと一度、結んでから「あんたなんか一緒にしないで」と低くうなるような声が返ってきた。






彼女の怒りに触れてもなお、笑顔のままの俺に、女は奥歯を噛みしめたように苦い顔になる。






俺は100円玉をすっと女の前へ差し出す。







「なんで1万円出したんですか」

「…え?」








100円を中指と薬指で挟んだまま、女の手中にある財布を指さす。






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