体育館で、裏切りを願ってる
・
――バシン!
――ダン!
今日も、体育館にボールの音が響く。
真っ白いバレーボールの音の中で、私はキミだけしか見えない。
今日も、僅かに開いたドアの隙間から、無断でこっそり見学中。
――ピピーッ!
「休憩ー!次はランニングだ!」
「「はい!」」
まったく、何が楽しいのやら。
笑っちゃうほど持久力がない私にとって、ランニングなんて縁を切りたくなるような単語だ。
「篠原(しのはら)、また来てんのか?」
「…あ、須藤(すどう)くん。…たまたまだよ」
同級生の須藤くんは、二年生にしてエースを任されている、実力者らしい。
マネージャーでもなんでもない私は、その辺はまったくわからないんだけど。
とにかくすごいらしい。
「いつもそう言ってんじゃん。バレバレ。好きな奴でも見に来てんの?」
「…っ、」
「え、マジで?」
「…誰にも言わないでね」
< 1 / 11 >