体育館で、裏切りを願ってる
最悪だ。
今までコッソリ来てたし、恋心は隠してきたつもりなのに。
…こうもアッサリ、バレてしまうなんて。
「…ね、誰?」
「教えない。須藤くん、なんか信用ならないし」
「うわ、ひっでぇ~!とか言って、その相手が俺だから言えないパターン?」
「違う。自意識過剰」
須藤くんがバレー部なのだって、見に来てから初めて知ったことだし。
こうして話してる今だって、あんまり興味ない。
それに……あ。
彼に気づいた私の視線は、彼に釘付けになっていて。
須藤くんが何か言ってるのも、全く聞こえてなかった。
楽しそうに走るなぁ…とか。
あ、今、友達と話してる…って、怒られてる。ふふ。
「…なぁ、篠原が見てるのってもしかして…永瀬(ながせ)?」
「…そうだよ」
私が好きなのは、エースの須藤くんなんかではなく。
永瀬、ただひとり。
それを知ってるのは、さっきまで私ひとりだけだったけど。須藤くんにも知られてしまった。
「アイツのこと、好きなんだ」
「内緒だよ」
「…なぁ、アイツのどこがいいの?」