体育館で、裏切りを願ってる
「でさー。永瀬は知ってた?あそこにずっと、篠原がいるの」
「は?」
須藤くんはそう言って、私のいる方を指さした。
ちょ、ちょっと待って。
永瀬に見られたらマズい。
咄嗟に、近くの植え込みに隠れる。
「…いねぇじゃん」
「隠れちゃったし」
永瀬に見つからなかった安心感で、力が抜けてフニャフニャになってしまった。
…というか須藤くん、口止めしたのに。
本当に信用できない。しかも、いちばん知られたくない人に言っちゃうし、最悪。
「でも永瀬、篠原を見つけたとして、どうすんの?」
「追い返す」
「え、カワイソーじゃん。好きな人見に来てるのに」
「は?」
…キレていいよね?キレていいよね?
須藤テメェ~!
…と言ってもきっと、須藤くんはヘラヘラ笑ってるだけだろうし、そもそも私がここにいることが永瀬にバレちゃうだろうから、言えないんだけど。
「…追い返す」
「わー、永瀬ひどいね」
「別に、何て言われたっていいけど」
…まぁ、そりゃそうだよね。
練習を見られてる…なんて知ったら、気が散るか。知り合いに見られてるなら尚更。
でも、須藤くんは平気そう。偏見だけど。
…でもとりあえず。
見つからないうちに、今日は帰ろう。
そう思い、コソコソしながら体育館を後にした。