体育館で、裏切りを願ってる







「…ちょっと面貸して」
「え」


次の日、教室に入る前。
…永瀬につかまった。

もしかしなくても、部活の覗きのことについてだよね。


有無を言わせぬまま引っ張られてきて、やって来たのは体育館。

私がいつも、永瀬を見てるところ。


「誰見てんの?」
「え?」
「お前、ここに来てるんだろ、いつも。…誰のこと見てんの?」
「…永瀬のこと見てるよ」


誤魔化そうかどうか迷ったけど、この際ちゃんと素直に言おうと思って、言ってみた。

だけど、永瀬は表情を1ミリも崩さないまま、私の肩を掴む。


「…冗談とかいいから」
「…ほんとだって。永瀬が頑張ってるの、たぶん誰よりも知ってるよ」


練習が終わっても、必ず居残りして練習してるとことか。
昼休みだって、のんびり昼ご飯食べたらいいのに、さっさと食べて練習してるし。

頑張りすぎだよ。


…でも、その努力が報われて、スタメンになったら。

永瀬は一気に、人気者になっちゃうだろうな。
頑張り屋だし、かっこいいし。優しいし面白いし。




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