体育館で、裏切りを願ってる
だから、永瀬の努力が裏切ってくれますように…って思ってる私。
…最低だ。
でも昨日、須藤くんの質問にあんな風に答えた永瀬を見て、その最低な気持ちが膨れ上がっちゃったんだよ。ごめん。
「…篠原は、俺がスタメンになったら嬉しい?」
「……スタメンどうのこうのはわかんないけど。永瀬が嬉しいなら、私も嬉しいんじゃない?」
「…っ」
半分、嘘だけど。
もちろん永瀬が嬉しいなら私も嬉しい。
でも、常にそうってわけじゃないし。
スタメンになんか、一生選ばれなくていい。
万年補欠でいいよ、永瀬。
そう思ってる私には、気づかれないようにしないといけない。
「お前ってほんと、そういうことよく平気で言えるよな…」
「だって本心だし」
万年補欠でいいとか思ってるくせに、「頑張れ」って応援したい気持ちは本物だから、ますます自分がわからない。
「…永瀬ってさ。多分、実力はそこそこあるんだよね。3年生いるから、スタメン選ばれないだけで」
「そこそこ…か。中学のときまではそれでよかったかもしんねぇけど、ここじゃ、それじゃダメなんだよな」
セリフは寂しげなのに、なんだか楽しそうで。
本当にバレーが好きなんだな…って思った。