大嫌いなクール王子になぜか溺愛されてます。
気持ちは理解できるが、わたしにそんなものは一年前から必要としていない。
むしろ地味さを極めているのがこのわたし。
まわりのクラスメイトの髪色は茶色や金髪、グレーだったりするけれど、わたしは染めたことがなく黒髪のまま。
ゆるふわに巻いたりサラサラストレートでなびかせたりしたらまだマシなんだろうけど、黒いゴムで一番下でひとつに結んでいる。
前髪は目元が目立たないのと、ある程度見える視界とを兼ね備えた長さにいつもカットしている。
ブラウスのボタンは一番上まで閉めてネクタイもきっちり。最初は首がしまるかと思ったけど、今はもうこれでないと逆に落ち着かなくなってしまった。
膝丈のスカートも同じだ。中学時代はよくもあんなに足を出していたと思う。
そして極めつけはこの春休みに新調した二個目となる黒ぶちの──
「……あれっ?」
もうすぐで正門に到着するというのに、わたしは今ごろあまりにクリアな視界に違和感を覚え目元に指で触れてみると、大事な大事なメガネをかけていないことに気がついた。
そもそも、目元に指で触れられることがおかしいのだ。
本来ならば、レンズやふちの感触がするはず。