大嫌いなクール王子になぜか溺愛されてます。
「ごめん、大丈夫?」
優しい声で手を差し伸べてくれたその人。
男子生徒のようだ。
よかった、いい人そう。
怖い人だったら嫌だもん。
安心するも、あまり間近で顔を見られたくないため、うつむいたまま「大丈夫です、ありがとうございます」と立ち上がった。
そういえば、とわたしはクラス表を見る必要がないことにそのとき気づき、校舎に入ることなく体育館へとまた急いだ。
春休み早々、朝からこんなバタバタするなんてすべてはメガネを忘れてしまったことがはじまり。
だけどこんなの、これから起こる出来事に比べたらどうってことないということを、わたしはまだ知らない。
ローファーを下駄箱に入れ、体育館へと足を踏み入れた。
ほかの生徒は教室に置いているようだが、間に合わなかったわたしは隅に鞄を置き、二年一組が整列しているであろう場所に近づくと、新山結子(にいやまゆいこ)がわたしの姿に気づき手招きをしてくれた。
結子の姿に自然と顔がほころぶ。
やっぱりわたしも結子も一組だ。わたしの考えは正しかった。
「花菜、来ないのかと思って焦ったよ~」
結子はほっと安心した様子で笑った。
「ちょっと忘れ物…」
わたしがそう答えたと同時に「もうすぐ始まります、静かにしなさい」という先生の声で次の言葉をつぐんだ。