【完】さつきあめ〜2nd〜
プロローグ

真っ暗な部屋では、大画面のテレビから光りだけが漏れていた。毛布に包まって、自分の体を抱きしめる。

うっすらと開いた瞳の先に、柔らかく笑うお天気アナウンサーが、真っ赤な傘を差しながら、天気予報を伝えていた。

「明日は1日中雨です!
皆さんお出かけの際は傘をお忘れなく」

明るい声のトーンと共に、窓を打つ雨の音が耳に突き刺すように響く。

夜はどこまでも深く、わたしをひとりぼっちにさせる。

ここは鳥かご。おそらくは、光が入っていたのとお揃いの鳥かご。

どうしてここにいるのか、何の為に存在するのか、そんな意味さえどこにも転がっていなくて、そもそも意味なんかないんじゃないかとさえ思ってしまう程の闇が襲い掛かってくる。

ひとりぼっち、涙さえ出なかった19歳の冬。

光りさえ映さない小さな鳥かごの中で、もう飛べないと、持っていた翼さえ広げようとせずに嘆いていた。

けれどいつしか気づいていてしまった。

わたしはわたしの意志でこの鳥かごの中にいることを望んだこと。

それでも

翼を失くし、飛ぶことさえ出来なかったわたしは、自分の足で歩きだし、誰かのために戦うことをそれでもなおも、諦めなかった。

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