【完】さつきあめ〜2nd〜
優しさの中にずっとあった強い瞳。
朝日が抱えてきた痛みとは違う痛みをこの人は知っている。…けれど。
「あの人は…強い人じゃない…」
強い人じゃない。そう言った後、光の強い眼差しが段々弱々しくなっていくのを感じた。
「宮沢朝日は強くあろうとした人。強くいなかったらいけなかった人だよ…。
だから…あの人は本当は強い人じゃない…」
「夕陽は、あの人の事をやっぱりよく分かってるね」
「それに光…本当に強い人は自分の欲しい物を全部手に入れた人でも、人の上に立つ人でもないんだよ…」
「それでも俺は………」
そこまで言って、光はわたしに背中を向けた。だから光がどんな表情をしているのか分からない。
「それに光…あたし…!」
「言わないでくれ!!」
背中を向けた光から、今までに聞いた事がない程大きな声。それに驚いて、一瞬肩を揺らす。
振り返ってわたしを再び見つめなおした光は、ハッとしたように何も見つめていないような虚ろな瞳をする。
それは傷ついた時の光の癖で、だからわたしはもうこれ以上光を傷つけまいと何も言えなくなってしまう。