【完】さつきあめ〜2nd〜
「さくらちゃん、宮沢さんの事が好きなのね」
好きなの?と聞くんじゃなくて、それは確信めいていて
わたしもこの人の前では、もう自分の気持ちを誤魔化せないのに気づいていた。
「あたし…おかしいですよね…」
「おかしい?」
わたしの言葉に、由真は眉をひそめる。
「だってあんなに光の事が好きだったのに…。
それに宮沢さんの事は最初から嫌いで、憎んでいたのに…。
それに酷い事されたのに…
こんな気持ちになるってやっぱりおかしいですよね…」
ずっと認めたくなかった。
自分の中で微かにこの気持ちが芽生えた日も
それが確信に変わった日さえ
わたしはわたし自身の気持ちを無視して、否定し続けた。
けれど口に出してしまえば、ぽろぽろと零れ落ちて行ってしまう。
でもそんなわたしの気持ちを、由真は否定しなかった。
「全然おかしい事なんかじゃないでしょ。あんたが有明を本当に好きだったのもわかるし、けどその気持ちが環境や時間と共に変わっていくのも全然おかしい話じゃないわよ。人の気持ちなんかふとしたきっかけで変わっていくものだし」
「でもあたしは、光が初めて好きになった人だったし、光を好きになってどうしようもなくて嫌いにもなれなくて…何があってもあたしはずっと光を好きなまんまでいるんだって自分で思ってました…」
「これだから恋愛初心者は…」
由真は呆れ顔だったけれど、わたしの話を真剣に聞いてくれた。
「それで、宮沢さんはさくらちゃんの気持ちを知ってるの」
「知らないです、むしろ嫌われてると思ってると思います。
それにあたし…宮沢さんに自分の気持ちもいうつもりもないし」