【完】さつきあめ〜2nd〜
「それって残酷ね…」
「え?!」
「だってそうじゃない?
一緒に暮らして、男と女がやるべきことはやってて、それでも宮沢さんはあんたに嫌われてるってずっと思い続けて、でも好きな女だから追い出すことも出来なくて、その状況って宮沢さんからしたらすごく辛いと思うんだけど」
由真と目が合わないように逸らしていたのに、ちらりと横目で見つめると彼女はしっかりとわたしの視線をとらえていて、真っ直ぐな瞳を向ける。
由真の言葉に反論出来ないのは、彼女が言っている事が図星だからだろう。
黙り込むわたしに対して、由真は話を変える。
「宮沢さんから、七色グループの事は聞いてない?」
首を横に振ると、やっぱりね、と由真は小さくため息を吐いた。
「有明の店が12月にオープンして」
「それは何となく…」
「七色実際実はヤバイって言われてんのよ?」
「え?」
由真の表情が今までになく真剣になっていく。
朝日はそんな事をわたしには一言も言わなかった。
そんな素振り1ミリだって見せなかったし、毎日家に帰ってきて、ひとりでは何もしようとしないわたしに、ご飯を食べさせたり面倒を見てくれた。
「有明が買い取ったダイヤモンドグループの調子が良くて、結構あっちにお客さんも流れてるみたい。
一過性のものだって宮沢さんは言ってるけど、実際そうなのかしら?
あの人は経営に関しては下の人間に相談するっていうタイプでもないしね」