【完】さつきあめ〜2nd〜
「何をおつくりしますか?」
「えっと…あんまりアルコール強くなくて…炭酸も入ってなくて、甘くないお酒がいいです…。って注文多すぎですよね」
苦笑したら、マスターは優しく笑って、リキュールの瓶に手を差し伸べた。
リクエスト通り、ZEROのマスターは炭酸の入ってない甘ったるくはないけれど、良い香りのするお酒を作ってくれた。
味なんて気にせずに飲んでしまう仕事で、シャンパンやワイン類を余り美味しいと感じた事がなかった。
けれどこういったバーで飲みお酒は見た目も綺麗で、少しだけ贅沢な気持ちになる。キャバクラとは違い、物静かな雰囲気も好きだった。
光と一緒に行っていたグラフもそんな感じで、落ち着いたお店だった。
桜のリキュールのお酒飲んだなぁ、なんて思い出す。
「美味しいっ!」
「ありがとうございます」
「爽やかな味ですね!」
「レモンとオレンジのリキュールを使ってるんだよ。すっきりしていて、君みたいな若い女の子には人気だよ」
カクテルを口に運びながら、お店を見回す。
マスターが慣れた手つきで包丁を持っていて、綺麗に彩られたフルーツをお皿に並べられた。
「いいお店ですね」
「ありがとう。この辺ではもう20年以上お店をやってるので、僕も大分歳をとってしまったけど」
「20年!すっごい!歴史のあるお店なんですね~!」
「いやいや、そんなにすごくないんだよ。
お恥ずかしい話、不景気の時に1回お店を手放した事もあって
ある人に拾われて、またお店を出す事が出来てこうやって今もバーテンを続けられている」