【完】さつきあめ〜2nd〜
「そうなんですね、あたし経営の事とかは全然わかんないですけど、やっぱり大変なんですね…」
「……沢村くんと来ていたって事は、宮沢くんの知り合いなのかな?」
「え?!宮沢さんを知ってるんですか?」
「うん、宮沢くんもよく来るよ」
朝日もよう来る…。その言葉を聞いて不安になった。
このお店は、朝日も利用するお店なのか…。それならば、もう来れないかもしれない。
「さっき拾ってくれたっていう人物が、宮沢くんそのものでね」
「え?!」
「宮沢くんがまだお店をやる前から飲みに来ててくれて知り合いだったんだ。
宮沢くんが企業してからちょっとしてお店の経営が危なくなって、結局辞めちゃったんだけど
ある日宮沢くんがやってきてね、お店に出資するお金を払うから、マスターもう一度やってみろよって」
「そう…だったんですか…」
「同じ業界や世間では極悪非道の経営者って言われてて嫌われたりもするけど
本当は優しい子だよ」
朝日は優しい。そんな事はわたしはとっくに知っていた。
「宮沢さんの事…よく知ってるんですね…」
そう言うと、マスターは目を細めて、懐かしそうに微笑んだ。
「さくら、さんですね」
そうして、わたしの名前を呼ぶのだ。
勿論沢村から話を聞いていて、たまたまわたしの名を知っていただけなのかもしれない。
けれど、彼は懐かしそうにわたしの顔を見つめる。