【完】さつきあめ〜2nd〜
「さくらちゃんはこのままでいいの?」

顔を覗き込む由真は心配そうな表情を浮かべた。
このまま、でいいわけないじゃないか。
この期に及んで意地っ張りのわたしは、朝日へ想いを伝えない事を決めていた。
わたしが朝日を好きになるのは許されない。それでも自分勝手なわたしは、朝日の温もりを求めて、朝日の芯にある優しさに甘えて、甘え続けていれれば楽だと思っていた。

縛られているのはわたしじゃない。朝日の方なんだ。

それを改めて思った瞬間、涙が溢れた。

「ふっ…くっ…」

由真はわたしの前へ無言でティッシュを差し出し、再び煙草に火をつける。

「どうしてそんなに好きなのに、意地っばかりはるの?
どうしてそんなに好きなのに、素直に好きって言わないの?」

「ダメなんです…」

「ダメ?それは有明への罪悪感って事?
有明への贖罪のために宮沢さんとは付き合えないって事?」

「ちがっ…。光の事は違くて…。
あたしは初めから…宮沢さんを好きになってはいけなかったんです…」

涙は次から次から溢れてくるのに、朝日へ対する気持ちを認めてしまえば、溢れる涙と同じくらい沢山の朝日への想いが溢れていく。

出会った日も、一緒に過ごした日々も、朝日の過去も、朝日自身を少しずつ知っていった時も
それと同じくらい、朝日を強く想っていた人をわたしは知ってる。

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