【完】さつきあめ〜2nd〜

わたしの問いかけに、マスターは目を丸くした。
そして懐かしむように、目を細めた。

「柔らかいんだけど、気が強い。
真っ直ぐなのに、考えすぎてしまうところがある。
愛されるのが上手で、いつも笑っているって。そういう女の子だった気がする。

容姿だけで言えば全然似ていないと思う。でも持っている雰囲気だとかが似ているのかもしれないね。
でも決して似ていたとしても、君は君で、さくらちゃんはさくらちゃんだ」

マスターの言葉に、わたしは黙り込んでしまう。
それでもそのまま彼は話を続けた。

「誰にも話した事がないんだけど」と、言葉にした瞬間に、少しの戸惑いを感じた。

誰にもした事のない話を、わたしにしていいのだろうか。

「実は、宮沢くんの母親の事を知っている」

「え?!」

「宮沢くん自身に話した事もない話でね。
宮沢くん自身を産む前の事だったから、昔の彼女しか知らないんだけど
宮沢くんと知り合って、彼の話を聞いて、やっと繋がったって感じで。バーを開く前、とあるお店でドライバーみたいな仕事をしていた事があって。
後から全部繋がったって感じかな」

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