【完】さつきあめ〜2nd〜
朝日SIDE
朝日SIDE
あの日光りを見た。
キラキラとしている物をいくら思い出そうと記憶を辿っても、いつも巡りゆくのはあの光景だった。
生まれて初めて見る大きな屋敷で、俺を嫌な目で見る大人に手を引かれて、丁度2階へと続く階段で足を止めて、そこには眩いほどの光りが入って来ていた。
神様が俺に与えてくれた、宝物かとさえ思った。
見上げた先には、俺よりいくばくか年上だろうか。
さらさらの黒髪と、クリーム色のセーターを着て、片手に本を持っている。
真っ直ぐできらきらとした瞳。同じ人間なのに、まるで別の生き物のように、光りの中で佇んでいた。
「誰?」
その声はどこまでも澄み切っていた。
それは余りに衝撃的で、言葉を発せない俺の肩を両手でユキさんという初老の女性が掴んで、目の前にいる男の子を手招きした。
俺を屋敷まで連れてきた男はまるで小汚い物でも見るように俺を見つめたが、ユキさんだけは違った。
玄関で俺を笑顔で迎えてくれて、躊躇いもなく俺の両手を握りしめてくれた。優しい微笑みだったと思う。
「光くーん、この子は朝日くん。
光くんのお兄ちゃんなの」
「おにいちゃん?」