【完】さつきあめ〜2nd〜
少年の名前は光。
てっきり俺より少し年上だと思っていた。
そして光は俺の弟だという。
「朝日くんは小さい頃は違うお家に預けられてたの。
綾ちゃんと一緒で光くんとは兄弟なんだよ
今日から一緒のお家で暮らすんだよ、仲良くしてね」
「うん!わかった!」
ユキさんの言葉に、光はやっぱりどこまでも澄んだ声で答え、俺に微笑みを見せた。
俺の年齢が8歳で、この時光は6歳。
俺たちの妹の綾は3歳だった。
そこでの暮らしは、今までの俺の人生ではありえない事ばかりで、毎日がきらきらとした宝石箱のようだった。
その中でも、光という存在は俺にとってとても特別で、それは羨望だったり、嫉妬だったり、綺麗なものと汚いものをごちゃまぜにした、言葉には言い表せれない感情たちだった。
自分の身の上を知ったのはもう少し大人になってからで
物心ついた頃には、俺には家族と呼べる人間はこの世にはいなかった。
引き取られた先の遠い親戚の家はお世辞にも裕福とは言えなくて、そこには俺と年齢の近い子供が2人いた。
今にして思えば、ネグレクトに近かったとは思うが、遠縁の親戚で、血も繋がらない俺を可愛がる義理ももちろんないわけで、食事もろくに与えられず、教育も受けさせてはもらえなかった。歳の近い2人の兄弟は俺を不気味がって、仲良くしようとはしなかったし、俺自身が人とのコミュニケーションをどうとっていいか分からない子供だった。