【完】さつきあめ〜2nd〜
子供を母が愛するのは当たり前。そんな概念も吹っ飛ぶくらい、実子である光や綾へも愛情を見せないような女だった。
光たちのおじいちゃんが築き上げた会社のひとり娘で、小さな時から甘やかされて育ってきた彼女は、妻になっても、母親になっても少女のような人で、女だった。
家事や育児も一切やらずに家政婦にまかせっきり。
派手な身なりをして、毎夜のように遊びに出かけた。父親はそんな彼女を咎める事はなかった。
今にして思えば、自分が結婚した男に隠し子がいて、裏切られた気持ちになるのは当たり前で、大人になってから彼女の気持ちは少しは分かるようにはなった。
血の繋がらない母親。
けれど、幼い俺には、事情を知らない俺にとって唯一の母親だった。
母からの愛情を受けた事のない俺は、愛情に飢えていた。そんな女からの愛情でも、求めていたんだ。
ある日の誕生日に、庭でつんだ花をプレゼントだと言い彼女に渡した事がある。
けれど彼女は手でその花をはらい、床に落ちて行った花を足で踏みつけた。
「お母さん、誕生日おめでとう」
その言葉を言い終える前に、まるで何かを憎むかのように軽蔑の眼差しを向けた彼女が俺を見下ろした。
「あんたの母親なんかじゃないよ!」
「あたしの子は、光と綾だけだ!」
「あんたの母親は違う母親なの、汚い仕事して、嫌な目をして
本当にあんたはあの女そっくり!!」